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（
の作品は英訳があります。
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柿凍みる／浦崎真子 |
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懸崖の菊トラックの荷となりて
留守電の唯繰返す夜寒かな
冬日和ふたりの手話のはづみをり
大根の土黒々と届きけり
冬の雹湯気立つ饅頭あきなへり
猫の背のおびえて食むや冬ざるる
冬晴れや鴉いちはの空となり
沿線のけしきとなりて柿凍みる
極月や腕組む男駅にあり
賀状にて届きし身の上話かな
遠くより赤子の声や日脚伸ぶ
すっくりと大根海と向かひけり |
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山野なで肩／江島桂子 |
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どんぐりを無賴に打たせ木の椅子に
この国の山野なで肩鳥わたる
碗に濃き牛乳の皺 神無月
コート着てたとへば狩に立つ気負ひ
短日やたづね当てたる暗香堂
極月へ敷居こつんとまたぎ越す
あきらめるべく大根を千六本
若水を呑む戌の舌 舌の音
父はその母のふところ寒の空
雪だるまはるかより来てうづくまる
生まれむと気配やふゆの一角に
オオイヌノフグリと教へ咽せてゐる |
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寒波／川久保珪子 |
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一灯の過ぎゆく道の虫しぐれ
垣根越し話した人や彼岸花
老女降り停まるバスや小六月
冬日向煙草吸ふ人庭にあり
小雪や縄持つ人の屋根にあり
犬抱いて散歩する人冬帽子
コツコツと足音のあり冬の朝
窓凍り両の手思はず口にいく
寒波ありバス待つ人の肩に力
道端の箱のお城や冬ざれる
この国は寒気に覆はれ金平糖
春立つや小さき長靴玄関に |
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冬蜂／北野貞雄 |
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赤い羽根付けし一団銀座行く
秋蝶もくぐり抜けたり寺の門
松毬を思い切り打つ鰯雲
椋群れてやがて一樹におさまりぬ
枯れ落葉つめて袋の軽きかな
冬日向幼子泣かす鳩の群れ
マフラーを忘れて行きし午後の客
手術日を延ばしのばしてあす師走
冬蜂の窓に動かずなりにけり
いちだんと高き手締めや大熊手
ラーメンの湯気たちこめて冬帽子
煤逃げの映画の客のまばらなり |
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秋から冬へ／佐久間章 |
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福岡の友に逢ふ日や秋日和
秋雨や傘を差す人差さぬ人
亡き友よ偲ぶ今宵の二十日月
秋空に舞ふ監督やロッテ勝つ
掃き寄せし落葉の上に散る落葉
湯上りや老妻茹でしずわい蟹
薄日洩れいてふ黄葉天を突く
強風に積もりし木の葉夜が明ける
冬晴れや鉄塔光る遠き山
枯れ枝に花よ咲けわが誕生日
湯豆腐や病気上がりの妻笑顔
戌年の初春迎へわれ老いぬ |
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今朝の光や／田中千波 |
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「少なめがいいね」今夜の栗ご飯
薄紅や秋の画廊の小さな絵
野分あと空すっこんとつきぬけり
着ぶくれの小さな背なや神楽月
夜深し扉のむかふ咳一つ
木々透きて振り返る人寒の朝
粕汁や夕餉万端ととのへり
雪催ひなれどきっぱりむすぶ帯
熱燗で少年の顔にもどりたり
豆煮るやぷくぷくぷくぷつのる雪
碧き瞳のシェフのウインク春隣
命逝き今朝の光や寒椿 |
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どんぐり／中山堯子 |
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木犀や伽羅の話を老姉妹
晩酌の人も加はり栗ご飯
遠くから少年の声水の秋
朝寒や隣家の窓の大くしやみ
子供らの笑ひ声する落ち葉かな
屋根に降る木の実転がる音として
どんぐりの温み拾つて夕仕度
葱の束わしつと掴む男なり
風花や貌高く上げてゐる山羊
垂り雪林檎ぱりつと齧つてる
三日月やキシキシ伸びる針の霜
冬銀河わが心音の轟けり |
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冬の果て／橋田ちせ |
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落鮎の身をくねらせて膳の上
秋雨の普請の柱ぬれて立つ
蹴散らされ段々転がる木の実かな
夕霧に球のもぐりて試合止む
猫のさまひねもす眺む老の秋
境内に講和もれきて帰り花
髪きりて首におちこむ寒さかな
元朝を鳥のさわいで明けにけり
噴水の鶴の嘴氷柱かな
戸をあけて鼻の先から寒さかな
猫の目の先に縮まる冬の蜘蛛
旗立ててセールの山や冬の果て |
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棚雲の下／平田一夫 |
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南面す刈田の中の屋敷墓
秋茜まなこの裏の暗き洞
杣道も岩も塗り込む紅葉かな
朱の山の朱を踏み散らし暮の秋
木の間より峠の沼の秋時雨
棚雲の下に村あり秋の朝
冬の山菊をつまめば崩れけり
もがり笛間合ひの妻の寝息かな
凩や欅の先の赤き星
唐松の根の日溜まりや山眠る
冬山に細身の富士の遠方（とほち）かな
冬ざるる墓所に造花の残りけり |
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月の時間／水谷佳奈 |
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秋雨や拾えぬいのちの多かりき
十月のどこかで失くすピアスかな
「なぐさめて」頼んだサラダにもみじのふ
外は月言葉少なき映画かな
更けてなお白馬しずかや濁り酒
初冬の時差のメイルを待つ時間
メロディーの残りたる耳冬北斗
暖房にまどろんで時 空白に
手袋の左手ばかり残りたる
ひんやりと流星月下の干大根
寒雷の休符にぴたりと当て鳴りぬ
石焼芋におい夜ごとの旭川 |
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青空／やまべゆりえ |
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青空を運びつづける秋の河
降り止みて金木犀の轍かな
凩の中へ踏み出すペダルかな
青空に漣のたつ冬の川
追ひ越して行く自転車にのる木の葉
娘の帰り待つとき聖樹明滅す
大枯野列車つっきる夕まぐれ
先客は枯葉一葉昇降機
眠る山あまたの鼓動きいてゐる
踏みはづす螺旋階段冬ざるる
捌かれてどろりとにらむ金目鯛
先急ぐ男の肩に雪礫 |
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点景／渡邉千華子 |
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淡き日の笹の小舟や秋も暮
街色に倣ひ銀杏も変調す
秋雨の瞬き増ゆる灯のあたり
天辺の座は揺るぎなき後の月
剥き栗を放るなどする小休止
緒は冬日和なる朝の人
冷凍庫のなか列島凍てゐたる
ベースライン寧ろ顕か冬木立
東京の霙見下ろす鉄道橋
日暮るるや落葉拡がりしままの庭
師走かな並び立つ肩右上がり
星冴ゆるおのが散らせし呼吸のさき |
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頭がひとつ／吉野裕之 |
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待つてゐて蜩のこゑ山の方（はう）
朝刊に大きな顔や秋の風
きらきらす一人が立てば秋の水
踏ん張つてみよ秋風のなかの牛
倒れつつ鶏頭鉄の空はあり
軒下に父の自転車秋の蝉
うつうつとビル立ち上がる秋の草
馬鈴薯や家人のこゑのそれつきり
胡桃の実母に従ふ日暮れかな
ひとりならにぎやかになる吾亦紅
バス停に頭がひとつ冬に入る
冬の靴づかづかと来て父の前 |
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